2015年度を締めくくる言葉として、又吉さんが選んだのは、「ずる」です。大きな筆で、力づよく「ずる」と書く又吉さん。(画像は、公式サイトにて)
今年も、企業の不正会計問題、オリンピックのエンブレム問題、フォルクスワーゲンの排ガス規制問題、FIFAの贈収賄問題、横浜のマンションでの「くい打ち」データ偽装問題など、数多くのズルが明るみになりました。
ごく最近では、ショーンK氏の経歴偽装問題が大きな話題を呼びました。
今年も、企業の不正会計問題、オリンピックのエンブレム問題、フォルクスワーゲンの排ガス規制問題、FIFAの贈収賄問題、横浜のマンションでの「くい打ち」データ偽装問題など、数多くのズルが明るみになりました。
ごく最近では、ショーンK氏の経歴偽装問題が大きな話題を呼びました。
経済学からみるとズルについて、どのようなことが分かるのでしょうか。
その一つは、誰でもズルをする可能性があるということです。
1. ズルされ続けた間寛平さんの「お人よし」エピソード
ここで登場したゲストは間寛平さん。又吉さんが、初めて好きになった芸人とのこと。
寛平さんは、何度もズルをされてしまったのでした。
「歩くはんこ屋」と呼ばれるくらい、すぐ保証人になってしまう。保証人になって背負った借金は6,000万円になったのです。
借金を返そうと考え付いたのが、「アメマバッジ」というバッジを作ることでした。
「アメマバッジ」とは何か―テレビ番組で自分が演じていた「アメママン」というキャラクターをかたどったバッジです。
しかし、その番組が打ち切られるなどして、売れるという見込みは大外れ。630円の仕入れ値で、定価1,500円で売ろうとしたということで、値段が高すぎたのでしょうか。
10万個も作ってもらう契約をしていたので、大量の在庫を抱えることになりました。バッジを作った業者から、製作代金の支払いを求められて、ついには裁判になったのです。そのあたりの詳しいいきさつは、日刊ゲンダイのこのサイトで。
「アメマバッジ」とは何か―テレビ番組で自分が演じていた「アメママン」というキャラクターをかたどったバッジです。
しかし、その番組が打ち切られるなどして、売れるという見込みは大外れ。630円の仕入れ値で、定価1,500円で売ろうとしたということで、値段が高すぎたのでしょうか。
10万個も作ってもらう契約をしていたので、大量の在庫を抱えることになりました。バッジを作った業者から、製作代金の支払いを求められて、ついには裁判になったのです。そのあたりの詳しいいきさつは、日刊ゲンダイのこのサイトで。
2. そもそも人はなぜズルをするのか
この問題について、経済学の考え方で答えを出そうとした人がいます。それが、アメリカの経済学者ゲーリー・ベッカーです。
彼は、「シンプルな合理的犯罪モデル」というものを考えました。それは、どのようなものか。
彼は、「シンプルな合理的犯罪モデル」というものを考えました。それは、どのようなものか。
「ある会議があり、時間ぎりぎりだったので、駐車違反をしないと会議に遅刻してしまう」という状況があったとします。このとき、駐車違反(ズル)をすることで得られるメリットと、こうむる損害(コスト)を比べて、ズルをする価値があるかを計算しているという考え方です。
ズルをすることで得られる利益・・・例えば、会議に間に合うことで自分のメンツが保たれるということ
ズルにより受ける損失・・・駐車違反の罰金(運よく払わないで済むかもしれない)
この利益と損失を比べて、利益の方が大きくなる場合に、犯罪をしてしまうのだと考えます。
ズルをすることで得られる利益・・・例えば、会議に間に合うことで自分のメンツが保たれるということ
ズルにより受ける損失・・・駐車違反の罰金(運よく払わないで済むかもしれない)
この利益と損失を比べて、利益の方が大きくなる場合に、犯罪をしてしまうのだと考えます。
この考え方によれば、ズル(犯罪)を防ぐための方法はカンタンです。
駐車違反の場合を例にとると、違反することで受ける損失が利益よりも大きくなるようにすればよいのです。
例えば、
駐車違反の場合を例にとると、違反することで受ける損失が利益よりも大きくなるようにすればよいのです。
例えば、
- 警察官の数を増やす
- 監視カメラを取り付ける
- 罰金を高くする
この、「シンプルな合理的犯罪モデル」に対して、反論したのが、ダン・アリエリーです。
彼は、行動経済学の面から、疑問を投げかけました。人が罪をおかすときに、そのように冷静に利益と損失を比べているのか疑わしいというのです。
彼は、行動経済学の面から、疑問を投げかけました。人が罪をおかすときに、そのように冷静に利益と損失を比べているのか疑わしいというのです。
彼は、ズルのメカニズムを解き明かすために、次のような1~4のステップで実験をしました。
- 数学の問題を20問、解いてもらう。
- 自己採点したうえで、解答用紙をシュレッダーにかける。
- 問題を解いた人が、何問解けたか自己申告をする。
- 一問正解するごとに1ドル支払う。
この実験から、アリエリーは、「少数の悪人がたくさんズルをしたのではなく、多くの人が少しズルをしたのだ」と結論付けました。この実験について、このサイトを参照しました。
寛平さんも、似たような経験があるそうです。
大勢の人を集めて、レースに出てもらい、各自のタイムを自己申告させました。タイムの良い人には、豪華賞品を渡すことにしました。すると、商品を渡す段になって、上位者みんなが「嘘のタイムを申告していました」と告白したのです。
これらのことから、多くの人は、ばれないときでも少ししか嘘はつかないということが分かります。悲しいけど嬉しいともいえます。でも、少しの不正が積み重なると、問題が大きくなってしまうわけです。
3. ズルをふせぐ方法はあるのか
それでは、どのようにすれば、人のズルを防ぐことができるか、考えてみます。
例えば、一緒に暮らしていて、他人のシャンプーをこっそり使う人がいるとき、それを防ぐためにはどうすればいいでしょうか。
又吉さんと同居しているサルゴリラ・児玉さんの告発によれば、なんと、又吉さんが児玉さんのシャンプーをこっそり使っているらしいのです。
例えば、一緒に暮らしていて、他人のシャンプーをこっそり使う人がいるとき、それを防ぐためにはどうすればいいでしょうか。
又吉さんと同居しているサルゴリラ・児玉さんの告発によれば、なんと、又吉さんが児玉さんのシャンプーをこっそり使っているらしいのです。
合理的犯罪モデルから考えると
こういった方法があげられます。でも、大げさだったり、実行するのが難しかったりします。- 監視カメラ
- シャンプーを部屋に持ち帰る
- シャンプーを鍵のついた箱に入れる
行動経済学から考えると、どうでしょうか。
アメリカの実験では、モーゼの十戒を読ませてからテストを解かせると、カンニングが減るといった結果が出ています。
最初に「私は嘘を書きません」ということにサインさせてから、内容を書かせると、正直な申告を促すことができます。
4. おまけ
「ずる」ってあまり、いい響きではないですね。来年は、どういう言葉で締めくくりましょうか、と大竹先生に聞かれて、「うんばらばー」でと答える寛平さんなのでした。