そんななかで、一石を投じる決定が出されたので、注目してみます。
この決定は、関西電力高浜3、4号機(福井県高浜町)の運転差し止めを命じたものです。
決定の概要は、時事通信のこの記事に簡潔にまとまっていました。
決定の詳細は、ここ(脱原発弁護団全国連絡会)にあるので、参照します。
1. 立証責任について
裁判において、電力会社側が、どのような証明をすべきなのか。
この点について、大津地裁は、次のように述べました。
- 新規制基準の制定過程における重要な議論
- その議論を踏まえた改善点
- 各原発の審査において問題となった点
- その考慮結果
2. 大災害に対する備えについて
福島の原発事故に見られるような、大災害に対して、どの程度の備えをすべきでしょうか。この点について、裁判所は、次のように述べました。原子力発電が効率的だからといって甚大な災禍と引き換えにすべきではない。
電力会社側は、「新規制基準を守れば、福島の事故と同様の事態が生じることはない」と主張する。しかし、福島の事故原因の究明は不十分であり、そのような主張が正しいとはいえない。
福島と同様の事故を防ぐためには、原因究明を徹底的に行うことが不可欠である。
徹底的な原因究明がされない現状は、新規制基準策定に向かう姿勢に非常に不安を感じる。
災害が起こるたびに「想定を超える」災害であったと繰り返されてきたことを考えれば、十二分の余裕を持った基準としなければならない。
そして、事故が生じた場合でも、致命的な状態に陥らないようにするために、新規制基準を策定すべきである。
現在の新規制基準が、そのような条件を満たしているかは疑問である。また、裁判所は、個々の安全対策についても、疑問を述べています。
非常用電源を設けたとしているが、それで十分だろうか。十分であるという社会一般の合意が形成されたといってよいか疑問である。
使用済み燃料ピットの冷却設備に危険性がある。十分な安全対策がとられているか疑問である。
3. 耐震性能について
そして、地震による被害の想定についても、疑問を投げかけています。地層を調査したとはいえ、断層が連動して動く可能性を否定できず、安全余裕をとったといえるものではない。
断層に基づく地震力を想定しているが、その想定方法が、地震力の最大限度をカバーしているとはいえない。