2018/06/06

「女性のアーティスト・研究者は、どのようにキャリアを築いていけばよいのか?」パネルディスカッションをまとめてみた

先日、東京芸大で行われたこの講演会を聞きに行ってきました。(5月26日開催)

第1部は、クローズアップ現代のキャスターをしていた国谷さんの講演でした。ただ、この時は、上野公園で子どもの遊びに付き合っていたので、聞けずじまい。

ちょうど子どもが昼寝を始めたので、第2部のパネルディスカッションから参加しました。

1. データの紹介

まずはじめは、芸術の分野でも、女性の露出が少ないという話から。
Katy deepwell氏の研究成果であるデータをもとに、話が進みます。
  • ドイツの美術大学における教授の割合
  • 画廊における作品のうち、女性作家のもの
  • 美術館の所蔵作品のうち、女性作家のもの
このような項目について、女性が占める割合がいかに低いか、示されました。

この項目について、使われたスライドは、このサイトで見ることができます。

2. どうすれば志を持たせられるか

それでは、芸術系(美術と音楽)の女子学生に、どうすれば志を持たせられるのでしょう。言いかえれば、どのようにキャリア設計を促すことができるのでしょうか。

東京音大では、1970年代から競争原理を持ち込みました。その結果、「せっかく技量を身に着けた女子学生を家庭に戻してしまう」という傾向は弱まりました。ジェンダーバイアスが薄れたのです。

東京音大では、教職員の採用昇進に男女差は無いそうです。

 3.  アーティスト・研究者に必要な力とは何か

芸術分野においてキャリアを築くうえで、不可欠なスキルや知識とはなんでしょうか。また、それらを養う方法にはどのようなものがあるのでしょうか?

東京音大では、音楽を演奏すること以外にも、さまざまなスキルが必要だと考えています。それを、自己のパッケージ化と呼びます。

自分自身を社会の中で活動できる存在に育て、そうした自分を社会に提示していく力が必要だと考えているのです。専門分野ですぐれているというだけではなく、他の分野の能力と組み合わせることで、その人の個性が発揮されます。

東京音大では、ミュージック・リベラルアーツ専攻という学部をもうけています。
この学部では、
  • 高度な専門実技
  • 英語スキルの獲得
この2つを目指しています。英語スキルの獲得とは、「英語による教養科目」「英文による卒論、制作」です。言葉によって発信する力をもつことが、東京音大のめざすアーティスト像だといえます。

このような力をつけることで、当然、音楽以外の他の分野でも活躍できるのです。

こういったカリキュラムは、美術の分野では難しいのでしょうか。ある美大のパネラーは、言語化をすれば良いとは考えていない、言葉を使わなくても自分の世界観を提示できるのではないか、と答えていました。

4. 実現するために必要な環境とは

女性のアーティスト・研究者が、キャリアを築いていくために必要な環境は何でしょうか。

というテーマでパネラーの人が話しましたが、聞き手の私の注意が散漫になってきたので、箇条書き。

  • 女性らしい〇〇という形容は残念
  • 管理職になることは一つの例だがそれだけではない 
  • セクハラ問題は、声を上げて来なかった自分たちの責任でもあるかも 
  • 女子学生が望んでいることは、意外と保守的である。例えば、東京音大卒業生の傾向を見ると、男性は、音楽活動に進む割合が高く、女性は企業に進む割合が高い。
  • 後輩たちへのアドバイスとして、継続すること・冒険することが大事

5. まとめ

国立音大の人だけが、きちんとスライド資料を用意して、アピールをしていたので、自然と印象に残ります。ミュージック・リベラルアーツ専攻にかける熱い想いが伝わりました。

音楽だけではない、プラスアルファの発信力が大切だ、という考え方は、今のSNS(ソーシャルネットワークサービス)時代にもふさわしいものです。